電力系統の調整力としての水素に着目、高電圧化で設備を簡素化、実証を経て社会実装へ

2026年2月25日、日立製作所本社 (丸の内)にて高電圧水素製造システムの研究開発説明会を開催しました。当日は鈴木朋子技師長、Next Research大原主任研究員、杉政主任研究員が、高電圧水素製造システムの狙いや技術、今後の展望について報告しました。

水素が担う新しい役割――電力需給の調整力として

電力需要の増加と再生可能エネルギーの導入拡大は、脱炭素とエネルギー安定供給を両立するうえで避けて通れない流れです。一方で、再エネは出力が変動しやすく、発電した電気を「必要なときに、必要な場所で」使い切るための調整力が課題になります。こうした背景のもと、余剰電力を別のエネルギー形態に変換して活用する手段として、水素が改めて注目されています。本説明会では、日立が描く水素製造システムの社会的意義と、ブレークスルーの絶縁配管技術、今後の展望について、鈴木技師長らが詳しく語りました。

画像: 水素が担う新しい役割――電力需給の調整力として

電力システムの課題:需給ミスマッチと調整力不足

近年、AIやデータセンターの拡大、産業の電化などを背景に、電力需要は年々増加しています。一方、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入も加速していますが、出力が天候や時間帯によって大きく変動するため、需給のミスマッチが生じやすくなります。例えば、昼間の太陽光発電による余剰電力が発生し、従来の電力系統では吸収しきれない状況が起きています。この「余り電力」は、従来は系統側で調整するしかありませんでしたが、再エネ比率が高まるほど、調整力の不足が社会課題となっています。この「調整力」をどう確保するかが、次のエネルギーインフラ設計の焦点になります。

画像: 電力システムの課題:需給ミスマッチと調整力不足

水素の役割:余剰再エネの吸収と長期エネルギー貯蔵

この課題に対し、日立が提案するのが「余剰電力を水素に変換して貯蔵・活用する」高電圧水素製造システムです。水素は蓄電池と異なり、より長期間・大規模なエネルギー貯蔵が可能であり、再エネの導入拡大と電化社会の進展に伴い、その重要性は増しています。鈴木技師長は「電力需給の調整力としての水素は、再エネ拡大と電化が進むほど重要性を増す」と語ります。余剰電力を水素に変換することで、電力の“価値”を最大限に引き出し、必要なタイミングでエネルギーとして利用できる新しいインフラを構築できます。日立の高電圧水素製造システムは、電解スタックを高電圧で駆動することで、変換器や電源設備の簡素化、省スペース化を実現します。これにより、従来型と比べて設置面積や周辺コストを大幅に削減できる点が特徴です。電力を「使い切る」ための選択肢として、水素の位置づけが変わりつつあります。

画像: 水素の役割:余剰再エネの吸収と長期エネルギー貯蔵

想定ユースケース:産業・地域・都市インフラへの展開

製造した水素は、産業用途(製鉄・化学)、地域の熱供給、都市部のガス供給、さらには自動車など多様な分野で活用できます。日立は、こうした水素の活用先を見据え、余剰電力の吸収と需要創出をセットで考える姿勢を示しています。事業展開としては、海外の再エネリッチ地域での大規模製造・輸送、日本国内の地域分散型システム、自治体や電力会社との連携による社会実装など、複数のシナリオを想定しています。例えば、オーストラリアなど再エネ資源が豊富な国で大規模な水素製造を行い、日本へ輸送するモデルや、国内の地域電力会社と連携し、余剰再エネを吸収する分散型システムの構築などが挙げられます。自治体や政府プロジェクトへの参画も進めており、パートナー企業との協業による社会実装をめざしています。

画像: 想定ユースケース:産業・地域・都市インフラへの展開

社会実装へのステップ:MW(メガワット)級から100MW級の社会実装へ

日立は2020年頃から環境分野での貢献領域の調査研究を開始し、2022年には中期経営計画の中で本格的な開発をスタートしました。高電圧水素製造システムの社会実装に向けては、電源・スタックの高電圧化に加え、高電圧下で水と水素を安全に流すための絶縁配管技術が鍵となります。今後は、主要コンポーネントの実証を経て、2020年代後半にはMW級システムの社会実装、2030年以降には100MW級の社会実装・グローバル展開を視野に入れています。実証から段階的にスケールさせる設計が、社会実装の現実解になります。

画像: 社会実装へのステップ:MW(メガワット)級から100MW級の社会実装へ

水素が拓く未来のエネルギー社会、社会実装に向けた挑戦

鈴木技師長は「高電圧化によるシステム簡素化と、運用・保全を含むシステム提供を通じて、新たなエネルギーインフラを実現したい」と語りました。日立は、絶縁配管技術による安全性・信頼性の検証を踏まえ、MW級実証から社会実装に向けた取り組みを進め、電力と水素をつなぐ新たなエネルギーインフラの実現をめざします。電力需給の調整という観点で水素は不可欠な存在となりつつあり、再エネの余剰電力を価値に変える取り組みを通じて、未来のエネルギー社会を切り拓いていきます。

(※本記事は2026年2月25日開催の説明会内容および関連資料・図版をもとに構成しています)

This article is a sponsored article by
''.