現場のニーズに応じてAIモデルを組み合わせ、迅速かつ高度な意思決定や業務効率化を支援

日立は、複数のAIモデル*1を連携させて複雑なタスクを解くマルチエージェントシステムにおいて、AIモデル同士に会話*2を行わせるだけで互いの相性*3を特定し、ハイパフォーマンスなAIチームを自動編成する「会話ベースAIオーケストレーション技術*4」を開発しました。近年、現場ごとの複雑な課題解決に向けて、単一の巨大なAIモデルに依存するのではなく、特定の分野に特化した複数の小規模AIモデルを協調させるマルチエージェントアプローチが注目されています。しかし、効果的に協調させるためには、各モデルの特性を熟知する必要があり、内部構造などが分からないモデルから最適な組み合わせを見つけることは困難でした。本技術は、AIモデル同士の会話の整合性から、協調性や専門性などのモデル間の関係性を算出・グラフ化し、現場のニーズに応じたハイパフォーマンスなAIモデルの組み合わせを自動で抽出します(図1)。会話(モデルの出力)のみから相性を特定するため、モデルの内部構造や事前の評価データが不要であり、API*5経由での利用に限られたブラックボックスAI*6も含め、幅広いAIモデルの中からAIチームの編成を提案します。これにより、鉄道やエネルギーなどの社会インフラだけでなく、製造業や医療など、現場ごとに異なる専門性が求められる複雑な課題に対しても、日立がこれまで培った現場知見を反映したAIモデルと、多様なAIを融合したAIチームを組み合わせることで、迅速かつ高度な意思決定や業務効率化を支援します。
今後、日立は本技術を社内外へ展開し、Lumada 3.0を体現するソリューション群である「HMAX」を通じた社会インフラや産業分野での価値創出と現場の課題解決を加速させていきます。

なお、本成果は2026年1月20日~27日に開催される人工知能分野の国際会議である The 40th Annual AAAI Conference on Artificial Intelligence (AAAI-26)におけるWorkshop (LaMAS 2026)で発表予定です。

画像: 図1 ハイパフォーマンスなAIチームを自動編成する「会話ベースAIオーケストレーション技術」の概要

図1 ハイパフォーマンスなAIチームを自動編成する「会話ベースAIオーケストレーション技術」の概要

*1 本稿では言語モデルをAIモデルと呼称する。
*2 人間が介在することなく、AIモデル同士が自律的にテキストを生成し、応答し合うプロセス。
*3 AIモデル同士が会話した際に、互いの発言内容がどれだけ意味的に噛み合っているか、協調性や専門性が発揮されているかを数値化したもの。
*4 単独では難しい複雑な課題に対し、複数のAIモデルやツール、システムを連携・統合・管理し、自動で協調動作させる仕組み
*5 Application Programming Interfaceの略。異なるソフトウェア同士がデータや機能をやり取りするための接点(窓口)やルール(規約)。
*6 ユーザーから内部の仕組みが見えないAIモデル。システムのインプットとアウトプットを閲覧可能だが、学習データや内部処理の情報が公開されていない。

背景および課題

近年、AI戦略2022*7や人工知能基本計画*8などの政策により、AIの戦略的な開発・利活用による社会課題の解決や持続可能な社会の実現が求められておりに向けた取り組みが進んでいます。こうした動きを背景に、さまざまな分野の業務や意思決定を支援するため、汎用性の高いAIモデル(大規模言語モデル)の活用が進んでいます。その一方で、社会インフラや産業分野では、現場ごとに専門的かつ複雑な業務課題への対応が必要とされるため、汎用性の高い単一の巨大なAIモデルだけでは一律に対応することが難しいケースがあり、特定の分野に特化した複数の小規模AIモデルを活かした仕組みが必要です。このような背景から、多様なAIモデルの強みを"チーム"として協調させ、単一のモデルだけでは対応が難しい専門的かつ複雑な課題にも柔軟に対応でき、新たな価値を創出するマルチエージェントのアプローチが注目されています。
しかし、世界中で開発される膨大な数のモデルから、複雑なタスクを解く効果的なチームを編成するためには、特定のタスクに対してどのモデルを組み合わせれば最大効果が得られるかなど、各モデルの特性を熟知する必要があります。これを見極め、モデルを最適に組み合わせることは困難であり、専門家による多くの試行錯誤が必要でした。特に、商用モデルの多くは内部構造が非公開なブラックボックスAIであり、その特性を事前に把握して最適なチームを編成することは極めて困難でした。

*7 AI戦略2022の概要
*8 人工知能基本計画 - 科学技術・イノベーション - 内閣府

課題を解決するために開発した技術の特長

そこで日立は、AIモデルの内部情報を必要とせず、モデル同士の会話から潜在的な関係性を可視化し、ハイパフォーマンスなチームを自動的に編成する「会話ベースAIオーケストレーション技術」を開発しました。主な特長は以下の通りです。

1. AIモデル間の関係性をグラフ化し、ハイパフォーマンスなAIチームを自動編成
本技術では、AIモデル同士が特定のトピックについて会話し、そのやり取りからAIモデルチームを自動編成できます。具体的には、会話の噛み合い方(意味的整合性の軌跡*9)からAIモデルの協調性や専門性などのモデル間の関係性を示す特徴量を算出し、「言語モデルグラフ」として可視化・構造化します。このグラフを解析することで、人手で試行錯誤することなく、相性の良いAIモデル群を自動的に抽出することが可能です。本技術は、従来の「タスク要件から役割を決める(トップダウン型)」ではなく、「AIモデル同士の会話から相性を見極めて、タスクに適したチームを編成する(ボトムアップ型)」のアプローチであり、会話のトピックを分野や業務ごとに変えることで、必要な役割や専門性を持つAIモデルを自動的に抽出し、幅広い現場知見とAIの強みを組み合わせたAIチームを構築できます。

2. ブラックボックスAIも含めた多様なモデルの公平な評価・活用
本技術は、AIモデル間の会話(出力結果)のみに基づいてチーム編成を行うため、モデルの内部構造(学習データやパラメータ)や性能評価データを一切必要としません。そのため、API経由での利用に限られた商用モデルや、オープンソースのモデルであっても、応答内容や協調の度合いから客観的かつ公平に評価することができます。これにより、特定ベンダーやクラウド環境に依存しない柔軟な組み合わせが可能となり、多様なAIモデルの活用を促進し、マルチクラウド化やマルチベンダー戦略を志向するお客さまの課題解決を支援します。また、お客さまが利用可能なAIモデルが限定的な場合でも、現場課題に即したチーム編成の提案が可能です。

*9 AIモデル同士が会話した際に、互いの発言内容がどれだけ意味的に噛み合っているか(=内容が通じているか)を、会話の流れとして記録・分析したもの。解析することで、AIモデル間の協調性や専門性の発揮度合いを評価できる。

確認した効果

マルチベンダーの数学や医療に特化したAIモデル、汎用AIモデルを混在させた実験により、分野ごとにハイパフォーマンスなチームを自動編成できることを確認しました。高度な数学的推論能力や専門的な医学知識を問う問題において、自動編成されたチームは、無作為に選ばれたチームよりも最大で13%高い正答率を記録し、専門家がAIモデルの仕様に基づいて編成したチームに匹敵する性能を実現しました。また、自動編成されたチームは、数学や医療などの各分野に特化したAIモデルで構成されており、会話内容からモデルの特性を捉えてチーム編成を行う本技術の有効性を実証しました。

今後の展望

日立は本技術を社内外へ展開し、鉄道やエネルギーなどの社会インフラをはじめ、製造業、医療など現場のユースケースに応じた適するAIチームの構築により、企業のソリューション提供スピードや質の向上を支援します。また、今後、お客さまやパートナー企業との概念実証(PoC)を通じて、多様なAIモデルとの協調や現場で蓄積されたデータの柔軟な活用を支援することで、「HMAX」を通じたIT×OT×プロダクトの連携による社会インフラの高度化と現場価値の最大化を推進していきます。

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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