説明性や透明性など倫理面に配慮したAI技術で、お客さまの人的資本最大化をめざす

日立は、国立大学法人 東京大学(以下、東京大学)との共同研究により、面談時の表情や身振り、発話のトーンなどの非言語情報を用いて性格特性を推定するAI技術を開発しました。本技術は、説明性や透明性などのAI活用における倫理的側面にも配慮しながら、心理学的理論に基づくビッグファイブ*1と呼ばれる5つの性格特性を推定するもので、人財と組織や業務のマッチングを支援します。今後、さまざまな領域のお客さまと連携して適用範囲の拡大や推定精度の向上を図り、お客さまの人的資本の最大化に貢献していきます。

労働市場の流動化に伴い人財の適財適所がますます重要となっています。熟練面談官の不足や人財評価のバラつきなどにより、適切な人財マッチングが困難になるケースが増えている一方で、AIを用いて、面談時の回答内容(言語情報)から被面談者の性格特性の評価を支援する技術の開発が進んでいます。このような支援技術により、公平で客観的な評価が可能になれば、人財に合った組織や業務へのマッチングの実現が期待されます。しかしながら、従来技術では言語情報を分析するために質問内容と回答内容を紐づけた学習が必須である(質問の変更が困難である)こと、学術的(心理学的)な性格特性の理論に基づく知見と関連付けた評価が困難であることが課題でした。

今回、日立は、心理学的に確立された性格特性の5因子(ビッグファイブ)モデルに基づいて、非言語情報で性格特性を推定するAI技術を開発しました。具体的には、東京大学の唐沢かおり教授の心理学的知見と日立の対話行動分析技術を組み合わせています。さらに、AIの推定過程の説明性・透明性を確保するため、機械学習(ニューラルネットワーク)を使用せず、ルールベースで行動の特徴量を抽出・合成して、性格特性を推定するモデルを構築しており、ビッグファイブの評価を実現しました(図1)。
今回、評価に同意いただいた98名の面談時の動画・音声データをもとに本技術を用いて推定したビッグファイブの各性格特性が、アンケート方式で取得した各性格特性と0.3以上の相関の強さを示し、心理学的尺度において統計的に有意な推定が可能であることを確認しました。これにより、言語情報を使用せず、面談時の非言語情報を用いて、心理学的に確立されたモデルに基づいた性格特性を推定できる可能性を示しました。

今後、日立はさまざまな領域のお客さまやパートナーと連携し、適用範囲の拡大と推定精度向上を進めます。また、日立のAI倫理原則*2に従いプライバシー保護、公平性、説明性や透明性の確保などに努め、面談者・被面談者双方の理解と同意を得た上で使用できるように検討することで、お客さまの人的資本の最大化や人財と組織・業務とのマッチング支援に貢献していきます。
なお、本成果の一部は、2024年9月4日~9月6日に広島で開催された第23回情報科学技術フォーラム(FIT2024)で発表しました。

画像: 図1 面談時の表情や身振り、発話のトーンなどの非言語情報を用いて性格特性を推定する技術

図1 面談時の表情や身振り、発話のトーンなどの非言語情報を用いて性格特性を推定する技術

*1 「人間の性格は5つの広い次元で説明される」という心理学の理論に基づいた5種類の性格特性のこと。以下に示す情緒安定性、外向性、開放性、調和性、誠実性などと呼ばれる5つの観点(因子)で構成される。
・ 情緒安定性:感情が落ち着きやすいか、欲求・感情の制御やストレスの対処が得意かなど
・ 外向性:積極的に外へアプローチしやすいか、人の集まりが好きか、上昇志向が強いかなど
・ 開放性:好奇心を持ちやすいか、新しい理論・社会に好意的か、複雑さを許容しやすいかなど
・ 調和性:社会や共同体への意識(志向性)をもちやすいか、敵対心をもちにくいかなど
・ 誠実性:計画を立てて事に当たりやすいか、行動する前にじっくり考えがちかなど
*2 2021年2月22日ニュースリリース「社会イノベーション事業における「AI倫理原則」を策定」

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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