高品質な放射性がん治療材料で治療薬研究を支援し、がん患者のQoL向上に貢献する

日立と国立大学法人東北大学(以下、東北大学)は、がんの放射線治療の一つである「アルファ線核医学治療」に用いる材料となるアクチニウム225(以下、アクチニウム)の製造量を増加させる技術と、治療効果を高め副作用低減に寄与する標識率*1を向上させる技術を開発し、このたび、製薬企業や研究機関向けに研究用のサンプル提供を開始しました(図1)。このサンプルは、国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、国立がん研究センター)との共同研究により、非臨床研究に必要な標識率が得られていることを確認しています。
今後、日立はサンプル提供先企業や研究機関との協業などを通じてアクチニウム製造技術の早期実用化をめざすと共に、アルファ線治療薬の研究開発を支援することで、がん患者のQuality of Life (QoL)の向上に貢献していきます。

                図1 提供する研究用アクチニウム225サンプルの例

アルファ線核医学治療は、がん細胞を攻撃する放射線の一種であるアルファ線を放出する材料と、がん細胞に選択的に集積する薬剤を結合させた、アルファ線治療薬を投与する放射線治療であり、体内に広範囲に転移したがんなど、既存の方法では治療が困難ながんに効果的に作用する治療法であることが知られています。しかし、アクチニウムなど医療向けの放射性材料は、現在、世界規模で供給量が限られており、日本政府は経済安全保障の観点から自給率を高めるアクションプランを策定しています*2
これまでに、日立と東北大学、および国立大学法人京都大学は、高効率・高品質なアクチニウム製造方法として、ラジウム226を原料とし光核反応を利用した製造技術を2021年に世界で初めて確立しました*3。さらに、日立は、2021年より、国立がん研究センターとの共同研究により、製造したアクチニウムのアルファ線治療薬への応用可能性を評価してきました。

今回、日立と東北大学は、原料となるラジウム226の取扱い技術と、電子線形加速器を用いた照射システムの改良により、研究用途に十分な量(50 MBq)のアクチニウムを一回の製造プロセスで製造することに成功しました。また、国立がん研究センターと共同で、アクチニウムと被標識薬剤の結合を阻害する非放射性の不純物を低減する技術を開発し、非臨床研究に必要な標識率が得られることを実証しました。

今後も、日立はサンプル提供先企業や研究機関との協業などを通じてアクチニウム製造技術の早期実用化をめざし、がん患者のQoLの向上に貢献していきます。

*1 標識率: 薬などの化合物に放射性核種を結合させる、あるいは化合物中の元素を放射性核種で置換する割合。
*2 2022年5月31日、「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」、原子力委員会
  https://www.aec.go.jp/kettei/kettei/20220531.pdf
*3 2021年10月18日 ニュースリリース:「体内で放射線がん治療を行う「アルファ線内用療法」に必要な材料、アクチニウム225の高効率・高品質な製造技術を世界で初めて確立」

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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