産学連携により、宇宙開発活動に携わるお客さまの課題解決をめざす
日立は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構と国立大学法人東京大学とそれぞれ別々に共同研究を進め、全方位からの電波を観測して電波源を特定する基本技術を考案し、その原理を検証しました。本技術を人工衛星に適用することで宇宙状況把握(以下SSA)*1の精度を向上し、他の人工衛星との衝突防止など、宇宙開発活動に携わるお客さまの課題解決をめざします。
近年の人工衛星打ち上げ数の増加によりSSAのニーズが高まっています。しかしながら、さまざまな高度の軌道で刻々と変化する宇宙の状況を3次元的、かつ網羅的に把握することは容易ではなく、宇宙開発活動の安全性確保などの問題が懸念されています。今回、産学連携により、人工衛星への搭載を想定した軽量かつ展開可能で構造安定性に優れたテンセグリティ構造*2の3次元アレイアンテナを設計し(図1)、回転しながらさまざまな角度で電波を観測することで電波源の方向を3次元的に可視化*3する回転電波干渉方式を開発しました。さらに、計算機シミュレーションおよび音波*4を用いた原理検証実験(図2)により、発信源の方向を3次元的に特定可能なことを確認しました。今後、宇宙開発活動に携わるさまざまなお客さまと連携して本技術を発展させ、SSAの高度化と、お客さまの課題解決に貢献します。
なお、本成果の一部は、2024年8月3日から8日に米国ユタ州で開催される国際学会「Small Satellite Conference 2024*5」で発表される予定です。
*1 宇宙状況把握(Space situational awareness, SSA): 人工衛星などの宇宙物体の軌道を把握すること。
*2 テンセグリティ構造: 圧縮部材と引張部材間の圧縮力と引張力のバランスに基づく、安定な自己平衡状態にある構造。
*3 検出した電波を複数の球面調和関数の重ね合わせとして表すことで、3次元アレイアンテナ周囲の全方位電波源を可視化する方法。
*4 電磁波-音響のスケール則(電波と同様の干渉実験を音波で実施するための関係式)に基づき、1.8 GHzの電波源探査を2.0 kHzの音波を用いて評価。日立が長年にわたり蓄積してきた3次元音響解析基盤技術を適用。
*5 38th Annual Small Satellite Conference; https://smallsat.org/
照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ