40種類の生物の現象や特徴、仕組みを組み合わせて、発散的思考を促し、アイデア着想を支援

日立は、社会課題を解決する革新的な社会システムの開発をめざし、さまざまな生物の現象や特徴、仕組みに学び、飛躍的な着想の支援が可能な「生き物ひらめきカード」を開発しました(図1)。本カードにより、進化の過程で生み出されてきた幅広い分野の生物の現象や特徴、仕組み40種類を組み合わせて、既存の社会システムに捉われないアイデア着想の支援が可能となります(図2)。今後、日立は、本カードを用いて社会システムの構築を支援し、複雑化する社会課題の解決に貢献していきます。

画像: 図1 開発した「生き物ひらめきカード」の試作品

図1 開発した「生き物ひらめきカード」の試作品

画像: 図2 「生き物ひらめきカード」を使用したワークショップの様子

図2 「生き物ひらめきカード」を使用したワークショップの様子

背景および取り組んだ課題

  • 現代社会は急速な変化を背景に複雑化しているため、既存の社会システムでは解決できない社会課題が増加しており、生物の進化の過程で生み出された特徴や仕組みを取り込む動きが進展中
    (例)粘菌の経路形成に学んだ輸送ネットワーク、アリ塚の内部温度が一定に保たれる仕組みに着想した空調システムなど
  • 生物に学ぶべき現象や特徴、仕組みは、分子や細胞から生物群まで多岐の分野にわたり、非専門家が自在に選定したり、多様な分野の現象を組み合わせたりして着想することは困難

開発した技術

  • 分子生物学から群集生態学までの多様な分野における生物の現象や特徴、仕組みを組み合わせて、社会システムへの着想を支援する「生き物ひらめきカード」を開発
  1. 生物の非専門家であっても、さまざまな生物の現象や特徴、仕組みのエッセンスを理解できるように設計
  2. カードの使用人数や使用目的に応じてカードを活用できるように、複数の発想法を提案

確認した効果

  • 開発したカードを用いてワークショップを実施したところ、生物の非専門家であってもさまざまな生物の現象や特徴、仕組みのエッセンスを理解し、社会システムへの着想を生み出せることを確認

発表する論文、学会、イベントなど

  • 本成果の一部は、2019年10月17日から10月18日に東京国際フォーラムで開催されるHitachi Social Innovation Forum 2019 (HSIF 2019)にて発表予定

外部連携

  • 「生き物ひらめきカード」の生物面の「遺伝・進化」「生態」(後述)は、京都大学フィールド科学教育研究センター 伊勢武史准教授、ならびに京都大学農学研究科 土畑重人助教による監修の下、開発しました。

開発した技術の詳細

1. 生物の非専門家であっても、さまざまな生物の現象や特徴、仕組みのエッセンスを理解できるように設計

表面(生物面)に生物の現象や特徴、仕組み、裏面(システム面)に社会システムへと発想するための質問と適用例を掲載する両面構成(図3)により、生物の現象から社会システムへと着想できるカードを開発しました。また、開発したカードを、生物の観点で3種類*1、システムの観点で4種類*2に分類し、使用者が取り組む問題意識や課題設定に応じて、カードの組み合わせや選定を工夫できるようにしました。
このうち生物面については、まず分子生物学から群集生態学までのさまざまな現象や特徴、仕組みから146種をピックアップしました。次に、ピックアップした現象や特徴、仕組みの正確性を精査するとともに、「キャンベル生物学」の章構成*3に基づいて分類し、生物の現象や特徴、仕組みが特定の分野に偏らないように配慮した上で、40種を選定しました。そして、生物学の専門家でなくとも、生物の現象や特徴、仕組みのエッセンスを理解できるように、分かりやすいキャッチコピーやイラストを付けたカードを開発しました(図3)。また、「遺伝・進化」「生態」については京都大学の生物系専門家の監修*4を受けることで、説明の正確性を損なわないように配慮しました。

画像: 図3 「生き物ひらめきカード」の構成例(各カードの左側が生物面、右側がシステム面)

図3 「生き物ひらめきカード」の構成例(各カードの左側が生物面、右側がシステム面)

2. カードの使用人数や使用目的に応じてカードを活用できるように、複数の発想法を提案

開発したカードの効果を評価するため、システム研究者などにカードを使用してもらうワークショップ実験を実施しました。ワークショップ実験では、複数人の議論により自由にアイデアを出し合うブレインストーミング法*5と、②議論途中でカードを使用する ③個人でカードを使用して発想した後に議論する ④使用するカードを随時追加しながら議論する という3種類の発想法をそれぞれ組み合わせて、各60分で生物の現象や特徴、仕組みから社会システムへとアイデアを出し合ってもらいました。
着想したアイデアに関するアンケート結果(図4)から、いずれの発想法を用いても、標準点数(3点)以上にアイデアを着想できることや、多様なアイデアを生み出せることを確認しました。このことから、生物学の専門家でなくとも、カードを用いて生物の現象や特徴、仕組みから社会システムへと着想を生み出すことが可能なことを確認しました。
また、個人でカードを使用して発想した後に議論した場合は、斬新なアイデアを生み出しやすく、議論途中でカードを使用した場合や使用するカードを随時追加しながら議論した場合は、対話を通じて新たなアイデアを生み出しやすいことが分かりました。このことから、カードの使用人数や使用目的に応じて発想法を工夫することで、より望ましいアイデアを創出できることを確認しました。
その他のアンケート結果から、ファシリテータが適切にカードを選定することでアイデアの展開や組み合わせを促進できる、1人で発想を広げるためのトレーニングツールとして活用できるなどの回答も得られ、カードの使用方法を工夫することで、さまざまな場面で使用できる発展性も確認しました。

画像: 図4 「生き物ひらめきカード」を用いた発想法による創出されたアイデアの主観的評価結果

図4 「生き物ひらめきカード」を用いた発想法による創出されたアイデアの主観的評価結果

*1 「分子・細胞」「遺伝・進化」「生態」の3分類。
*2 「単体」「同一複数」「異種」「共生」の4分類。
*3 生命の化学、細胞、遺伝学、進化のメカニズム、生物多様性の進化的歴史、植物の形態と機能、動物の形態と機能、生態学、の8章構成。
*4 京都大学 フィールド科学教育研究センター 伊勢武史 准教授、農学研究科 土畑重人 助教による監修。
*5 複数人の対話により発散的な思考を促し、アイデア着想を支援する方法の一つ。アイデアの質よりも量を重視する、相手の発言を否定せず奔放な発想を歓迎する、良いアイデアは結合し発展させる、アイデア着想中は結論や判断を出そうとしない、というマインドセットの下、対話を通じてアイデアを着想する。

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ
問い合わせフォームへ

掲載先

このトピックスは、以下の新聞、Webサイトに掲載されました。

2019年10月30日 ニュースイッチ

This article is a sponsored article by
''.