経営者が検討するさまざまな戦略のリスクや効果を定量的に評価することで、危機下の組織変更や投資の迅速な意思決定を支援
日立は、さまざまな事業環境の変化に対応しつつ、それを成長に繫げるレジリエンス経営を支援するシミュレーション技術を開発しました。本技術は、経営者が危機下で検討するさまざまな戦略のリスクや効果を定量的に評価することで、組織変更や投資の迅速な意思決定を支援します。そのために、従業員モデル、業務モデル、各種ソリューションモデルなどのテンプレートをシミュレーションの部品(エージェント)として備え、実際の経営シナリオに沿って組み合わせることで、幅広い事業分野の計画検証を直観的・定量的に行うことを可能としました。
日立は本技術を今後、社会インフラサービスを提供されるお客さまのレジエンス経営に活用いただくことで、安心・安全な社会の実現に貢献します。
本開発の一部を、2021/08/22より開催される「70th CIRP General Assembly」学会*1にて発表します。
開発した技術の詳細
今回開発したシミュレーション技術の詳細を、社会インフラサービスの運用・保守事業を例に説明します。
1. 事業要素のテンプレート作成技術
事業形態の類型化と業務分析に基づき、社会インフラサービスの運用・保守事業で共通に実施される業務をテンプレート化し、シミュレーションの部品(エージェント)として準備しました。特に設備を表現するモデルはFMECA*2などの信頼性分析に基づいて構成したため、複雑な構造や特性を有する設備の挙動を再現可能です。これにより工場や発電所などの大規模設備に対する運用・保守から、風車や店舗設備など人員派遣による運用・保守まで、幅広い事業計画の検証を可能としました。また、状態監視や故障診断などIoTソリューションのテンプレートを備えることで、ソリューション導入計画や目標性能の検討も可能としています。
2. エージェントモデルによるシミュレーション構築技術
シミュレーションは、ステートチャート図*3として記述された前記テンプレート(エージェント)の組み合わせにより実行されます。このようなエージェントモデルの特長は、事業の規模や内容に応じて、設備、作業員、スケジュール管理者などをエージェントとして追加・削除することで、幅広い事業計画を再現できることです。また、現実の設備・組織構成に沿ったエージェントを組み合わせてシミュレーションを行えるため、数理モデル化などの手順を必要とせずに計画検証を直観的・定量的に行えます。さらに、OSSのシミュレーション開発基盤Repast Simphony*4上に構築することで、実装の効率化・低コスト化を実現しています。
*1 Toshiaki Kono and Koichi Haneda, “Simulation-supported maintenance design and decision-making using agent-based modeling technology”,
70th CIRP General Assembly
*2 Failure Modes, Effects and Criticality Analysis(故障モード・影響および致命度解析):
FMEA(故障モード影響解析)をベースとし、これに故障モードの発生確率を加味して故障リスクの大きさを算出し、対策の優先順位を決定する解析手法
*3 処理内部での状態遷移を示すための図
*4 https://repast.github.io/
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株式会社日立製作所 研究開発グループ
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