サービス品質設計やコスト管理などの運用作業を効率化・最適化し、お客さまの競争力強化を支援
日立は、クラウドを活用したITサービス運用の現場負担や人財不足の解決に向けて、ITサービス運用者がサービス価値向上に専念できるクラウド運用成熟度モデル*1を開発しました。本モデルは、従来、担当者の運用ノウハウや勘に頼っていた応答速度やエラー率などのサービス品質設計や、クラウド利用コストの管理を標準化・自動化し、運用現場の作業を最適化します。具体的には、サービス品質指標(SLI*2)の標準設定や、クラウド利用コストの業界標準形式(FOCUS*3仕様)による一元管理と異常検知により、迅速で適切なサービス品質設計やクラウド運用コスト全体の管理が可能となります。今後、日立は、本モデルをクラウド運用アドバイザリサービス「Hitachi Application Reliability Centers (HARC)*4」などを通じて多くの運用者へ提供し、ITサービス運用の効率化とクラウド運用コスト全体の最適化を支援していきます。さらに、AIを活用した運用効率化や、運用者の業務環境に合わせたモデルのカスタマイズにも取り組み、Lumada 3.0を支える技術の一つとして社会全体のデジタル基盤の信頼性と効率性向上に貢献していきます。
*1 クラウド運用成熟度モデル:クラウド運用時の作業要素ごとに5段階で「運用のあるべき姿」を規定し、現状評価、運用の改善提案、実装・支援ツールなどの開発指針となるモデル。各要素の進み具合を成熟度として評価する。
*2 サービス品質指標 SLI (Service Level Indicator):ITサービスやシステムの品質や信頼性を定量的に測定するための指標。
*3 FOCUS (FinOps Open Cost & Usage Specification):クラウドやSaaS (Software as a Service)など、ITサービスの利用料金データを標準化するためのオープン仕様。
*4 あなたの知らないクラウド運用へ Hitachi Application Reliability Centers (HARC):日立のクラウド Hitachi Cloud
背景および課題
デジタルサービスの基盤としてクラウド活用が加速する中、企業や組織には高品質・低コスト・高効率の運用体制の実現が求められています。しかし、従来はサービス品質やクラウド利用コストの指標設定・管理が属人的であり、多大な労力がかかっていました。また、IT人財不足が深刻化し、ノウハウの継承や安定運用の維持も大きな課題となっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速やIT活用の高度化が進む現在、現場負担を軽減し、持続的な運用最適化を可能とする新しいクラウド運用モデルが求められていました。
課題を解決するために開発した技術・ソリューションの特長
そこで日立は、現場負担の軽減と運用の標準化・効率化を実現し、運用者がサービス価値の向上に一層注力できるクラウド運用成熟度モデルを開発しました(図1)。本モデルは、クラウド運用に必要な作業手順とサービス品質指標(SLI)を体系化・標準化することで、担当者に依存せず安定した運用品質を実現できる基盤です。さらに、SLI候補の自動抽出やクラウド利用コストのデータ一元管理などの技術要素を連携させ、クラウド運用コスト全体の効率化と最適化に加え、監視データのサイロ化やアラート増加など運用現場の分断を抑える運用設計を支援します。主な特長は以下の通りです。
1. 運用手順・品質の標準化と効率化による安定運用と現場負担の軽減
国際標準のITサービス運用フレームワーク(ITIL4*5)に基づき、「HARC」で培った運用診断・改善のノウハウを体系化した運用成熟度モデルを構築しました。具体的には、クラウド運用の作業要素(サービスレベル設計、計測、アラート設計、オンコール計画、一次対応、エスカレーション、トラブルシューティングなど)ごとに5段階で「運用のあるべき姿」を定め(図2)、担当者の行動や必要なツール、基準、課題、改善策などの運用ノウハウを整理し、運用ルールとして標準化しました。各作業の成熟度(進み具合)ごとに要件や改善策を提示することにより、担当者に依存せず、運用の標準化と効率化を実現し、運用現場の作業負担を抑えながら安定したサービス運用に貢献します(表1)。これにより、ツール間の分断を抑えた運用設計が可能になります。
2. サービス品質指標(SLI)の自動抽出による品質設計の効率化
企業や組織がクラウド上で運用するITサービスやアプリケーションなどのシステム特性に応じて、最適なSLI候補を自動抽出する技術を開発しました。具体的には、57種類のSLI候補から、システムや業種ごとの機能要件(API*6応答速度、エラー率、データ整合性など)と、非機能要件(可用性、セキュリティ、スループットなど)をもとに、ルールベースの独自アルゴリズムでSLI候補を自動抽出します。これにより、システムや業種の特性に応じた適切なサービス品質設計が可能となり、現場での合意形成の迅速化やサービス品質の向上を実現します。さらに、運用現場の標準化・自動化により、チケット(対応記録)の自動発行など作業効率化も実現します。また、監視データの集約・分析により、アラート対応の負担軽減に寄与します。
3. FOCUS仕様準拠によるクラウド利用コストの一元管理・最適化
複数クラウドサービスのコストデータを、業界標準のFOCUS仕様の統一フォーマットへ自動変換・統合できるツールを開発しました。さらに、FOCUS仕様に対応付けたマッピングテーブルを整備し、クラウドサービスごとに異なる請求書の項目名、データ構造、単位、表記方法などクラウド利用コストのデータを一元的に可視化・分析できるダッシュボードを構築しました。これにより、サービス単位や期間単位でのクラウド利用コストの比較と、それらを機械学習により異常検知することで、従来、気付きにくかったクラウド利用コストの変動を早期に発見できるようになり、マルチクラウド環境でのクラウド利用コストの管理・最適化や経営判断の迅速化を支援します*7。また、コスト情報の分断・属人化の抑制に寄与します。

図1 クラウド運用成熟度モデルの概要
| 成熟度 | 運用のあるべき姿(一例) |
| レベル5 | 誤検知・見逃し率を評価し重要な異常を確実に検知しつつ、継続的にノイズアラートの削減基準見直しが行われている。 標準化・自動化により、現場負担を最小化している。 ⇒ アラート設計の最適化 |
| レベル4 | 履歴やデータに基づき、個別にルール化せずとも動的にノイズアラートが抑制され、自動化による品質の向上や効率的な運用が行われている。 ⇒ アラート設計の効率化 |
| レベル3 | 類似アラートの集約や発報条件の調整により、ノイズアラートの削減が行われている。 ⇒ アラート量の削減 |
| レベル2 | 自動復旧や計画メンテナンスなど、対応不要なノイズアラートがフィルタされている。 ⇒ ノイズアラートの除外 |
| レベル1 (未成熟) | アラート設計が属人的で、実際には対処が不要なノイズアラートが多く、重要な異常がノイズに紛れて見逃されやすい。 |
*5 Information Technology Infrastructure Library 4の略。運用プロセスや管理手法のベストプラクティスを示すためのITサービス運用の国際標準フレームワーク。
*6 Application Programming Interfaceの略。異なるソフトウェア同士がデータや機能をやり取りするための接点(窓口)やルール(規約)。
*7 Multi-Cloud Cost Management Platform with FOCUS | IEEE Conference Publication | IEEE Xplore
今後の展望
日立は今後、本モデルをクラウド運用アドバイザリサービス「HARC」などを通じて多くのお客さまへ展開し、ITサービスの運用効率化・運用コストの全体最適化を支援していきます。さらに、AI活用による運用効率化や、お客さまの業務環境に合わせたモデルのカスタマイズにも取り組み、AIエージェントの導入効果を最大化する「HARC for AI*8」との連携を進め、Lumada 3.0を支える技術の一つとして社会全体のデジタル基盤の信頼性と効率性の向上に貢献します。
*8 AIエージェントの導入効果を最大化するHARC for AIを提供開始:2025年10月7日
照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ


