日立は、空気圧縮機、ファン、ポンプなど産業用役装置の省エネ化に向け、一般的な産業用モーターに比べ高速回転が可能で、大幅な高効率化と小型化を実現するラジアルギャップ型*1アモルファスモーターを開発しました。さらに、用役装置における本技術の効果を検証するため、コンパクトなダイレクトドライブ*2型空気圧縮機(図1)を開発し、動作試験を開始しました。今後、さまざまな産業用機器に本技術を適用して省エネ化を進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
日立は2008年に低損失のアモルファス金属*3を鉄心に用いたアモルファスモーターを開発*4後、長年にわたって培ったモーター設計と生産技術を活用して、低損失な磁気回路や、高速化に伴う軸振動および発熱を抑える軸支持構造、冷却構造などを開発しました。また、ラジアルギャップ型アモルファスモーター(図2)では、低損失なアモルファス金属を適用するために、エネルギー損失が集中する鉄心を分割することで単純化し、従来困難であったモーターの高速化と高効率化を両立しました。その結果、定格回転速度20,000r/min*5で効率95%以上(IE5*6相当)を達成するとともに、1/5の小型化に成功しました。日立は、これらの成果により、2024年にNEDO省エネルギー技術開発賞を受賞*7しています。
今回、これらの効果を検証するため、オイルフリーのスクリュー型空気圧縮機に本モーターを組み込んだコンパクトなダイレクトドライブ方式のシステムを開発し、動作試験を開始しました。
今後はお客さまと連携し、ポンプ、ファン、ブロアなど幅広い産業用役装置に本技術を適用して省エネ化を進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
なお、ラジアルギャップ型アモルファスモーターの開発成果については、2024年8月28日~30日開催の電気学会産業応用部門大会*8において発表予定です。
謝辞:本研究の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/超高効率用役系駆動システムの開発の一環として実施されたものです。
*1 モーターで発生する磁束の向きが回転軸に対し直角方向の意。モーターの構造の違いを示すために使われる型式の一つ。
*2 変速機などを使わずにモーターにより直接駆動する方式。
*3 ここでは鉄を主成分とする非晶質金属。
*4 日立評論2015年6・7月合併号:「国際高効率規格IE5レベルを達成したアモルファスモータ」
https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/2015/06_07/2015_06_07_07.pdf
*5 定格回転速度とは、指定された電圧等の適用時に出力される回転速度のこと。r/minは1分間での回転数(rotations per minute)。
*6 国際電気標準会議(IEC)が定めるモーターのエネルギー効率国際規格で最も高いレベルのもの。
*7 理事賞受賞「超高効率用役系駆動システムの開発」
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101722.html
*8 2024年電気学会産業応用部門大会
https://gakkai-web.net/jiasc/program/hp24/html/schedule.html
照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ