セラミックスや医薬品などの粉体材料を用いた製造プロセスの自動化をめざす

日立は、粉体材料を用いた製造プロセスのリアルタイム制御や自動化をめざして、サブミクロンオーダーの微粒子を含む材料中の一つひとつの粒子を小角散乱光解析と形状解析を組合せて画像認識し、粒度分布を高分解能に計測する技術を開発しました(図1)。モード径*1が0.2 µm、0.4 µm、1.5 µmのアルミナ*2微粒子の混合材料を計測した結果、各モード径に対応してピーク分解された粒度分布を計測できることを確認しました。本技術により、セラミックスや医薬品など微粒子から構成されている製品の品質を左右する粒度分布の変動をリアルタイムに計測することが可能となります。今後日立は、本技術を自動化することで、計測データに基いた粒度分布や後工程のリアルタイム制御を可能とし、熟練者の経験や試行錯誤に依らずに生産性を最大化するモノづくりの実現に貢献していきます。

画像: 図1 アルミナ微粒子(モード径0.2 µm、0.4 µm、1.5 µm)の混合材料の計測結果

図1 アルミナ微粒子(モード径0.2 µm、0.4 µm、1.5 µm)の混合材料の計測結果

背景および取り組んだ課題

  • 製造業において、製造プロセスをIoT*3やAI*4などを活用して高度化・自動化し、熟練者の経験に頼らず生産性を最大化するモノづくりへの変革が求められている
  • 製造プロセスに粉体材料を用いる場合、製品の品質を左右する材料の粒度分布を管理・制御する必要があるが、従来では、熟練者の経験に基づいて行われているため、そのスキルに応じて不良や手戻りが発生して、生産性を阻害していた

開発した技術

  • サブミクロンオーダーの微粒子を画像認識する技術
  • 形状認識と組み合わせた粒子サイズ解析技術

確認した効果

  • 粒子サイズが異なる幾つかのアルミナ材料を計測した結果、最小で0.2 µmの材料を計測できることを確認
  • モード径が0.2 µm、0.4 µm、1.5 µmの各種アルミナを混合した材料を計測した結果、各モード径に対応したピークを示す粒度分布を計測できることを確認

発表する論文、学会、イベントなど

  • 本成果の一部は、2019年11月10日~11月15日に米国オーランドで開催されたAIChE*5 Annual Meeting 2019で発表済

開発した技術の詳細

1. サブミクロンオーダーの微粒子を画像認識する技術

従来の粒度分布計測技術として、レーザー光の散乱角度分布のパターンから粒度分布を算出するレーザー回折法、粒子の形状を画像認識して粒子サイズを算出する画像解析法などがあります。レーザー回折法においては、微粒子のみで構成される材料の場合は計測可能ですが、粒子サイズの異なる材料を混合した場合、サブミクロン微粒子による微弱な信号が大きい粒子による信号に埋もれてしまい十分な分解能で粒度分布を計測することが困難な場合がありました。また、画像解析法においては、回折限界などによりサブミクロンオーダーの微粒子を認識することが困難でした。日立は、微粒子に対して感度の高い散乱光の強度が、散乱角の小さい(小角散乱)範囲において粒子サイズと相関があることに着目しました。本技術は、独自に開発した光学系により個々の粒子による小角散乱光を画像で捉え、粒子サイズを算出することで、サブミクロンオーダーの微粒子計測に対応します。

2. 形状認識と組み合わせた粒子サイズ解析技術

本技術は、2つの光源を用いて、まずはサブミクロン領域に感度の高い上述の散乱光の画像を取得し粒子サイズを算出します。次に、1ミクロン以上の領域に感度の高い粒子形状の画像を取得し、形状認識による粒子サイズを算出します。これにより、従来の画像解析法の計測可能範囲をカバーした上で、サブミクロンオーダーの微粒子に対して計測可能範囲を拡大することが可能となります。

画像: 表1 従来技術との比較結果(自社評価結果)

表1 従来技術との比較結果(自社評価結果)

*1 モード径: 粒度分布において頻度が最も高い粒子サイズ
*2 アルミナ: 酸化アルミニウム(Al2O3)
*3 IoT: Internet of Things
*4 AI: Artificial Intelligence
*5 AIChE: American Institute of Chemical Engineers

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ
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