人の集まる公共空間における感染を抑止しつつ、自粛疲れの軽減を促す

日立は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止ソリューションとして、施設利用者が自分の歩行に合わせて足元に投影される映像を楽しむことで、フィジカル・ディスタンシング*1(身体的距離の確保)に繋がる行動を自然に誘発する新たな体感型映像システムを開発しました。本システムはリアルタイムに人の位置を計測できるLiDAR*2やToFカメラ*3などの高精度なセンサーを用いて、個人を特定することなく人同士の距離を検知しており、適切な距離を保たないと映像が見えなくなるなど、フィジカル・ディスタンシングと連動するように動作します。これにより、駅や空港、大型商業施設、アミューズメントパークなどの人の集まる公共空間におけるウィルスの感染拡大を抑止することでサービス業の事業継続性を改善しつつ、足元に投影される映像から自ずと楽しさや気づきを得ることで施設に訪れる人々の自粛疲れを軽減する効果も期待できます。今後、日立はウィズコロナ、アフターコロナの時代を見据え、人流計測・解析結果の人へのフィードバック手法の最適化に取り組み、行動誘発ソリューション事業を拡大していきます。

画像: 「Physical Distancing 水族館」のデモ動画 youtu.be

「Physical Distancing 水族館」のデモ動画

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図1 「Physical Distancing 水族館」のデモ動画

背景および取り組んだ課題

  • COVID-19が世界規模で蔓延、長期化するなか、人の移動を制限したり入場を制限するなどの方法では、小売、外食や観光など、人が3密になる可能性の高いサービス業の事業環境が悪化することが問題となっています。
  • 事業継続と感染防止の両立のため、人の移動を制限しない代わりに人々が外出先でお互いに2m以上の距離を保つ、いわゆるフィジカル・ディスタンシングが求められています。
  • フィジカル・ディスタンシングを保つためには床面テープなどで標示がされますが、景観的に利用者の印象を損ねかねないうえ、利用者が標示を見落としたり、慣れによる意識の低下も懸念されます。

開発した技術

  • 人々の密集具合に応じて映像の内容を変化させ、フィジカル・ディスタンシングができるようにする、「Physical Distancing水族館」の行動誘発デモンストレーション
  • 歩行中の人々の位置をリアルタイムに計測し、足元にプロジェクターの映像を投影する、人流計測 のリアルタイムフィードバックを容易化する制御連携プラットフォームシステム

確認した効果

  • フィジカル・ディスタンシングを自然に楽しみながら実践できます。
  • 床面テープのように標示場所が固定されることもなく、各々の歩行者に対して動く映像を提示するため見過ごされにくくなります。
  • 投影する映像の内容を施設ごとのロゴやイメージキャラクターに差し替えるなどすることで、施設の魅力のアピールにも役立てることができます。

開発した技術の詳細

1. 「Physical Distancing水族館」の行動誘発デモンストレーション

本デモンストレーションでは、歩行者の足元に魚の映像を投影します。その魚の映像はその人の移動に合わせて追随して動き、歩行者の楽しさを誘います。しかし、他の人との距離が近くなるなど感染リスクが高まると、魚の表示がなくなるなど、感染リスクの低い状況に比べて面白みのない状態となります。このようにして、歩行者が楽しめるようにすることと、他の人との距離を安全に保つ行動とが、自然とつながります。なお、このデモンストレーションでは水族館を想定していますが、投影する映像を用途に応じて差し替えたり種類を増やすことができます。

2. 人流計測のリアルタイムフィードバックを容易化する制御連携プラットフォームシステム

「Physical Distancing水族館」のような、高精度でプライバシー問題のないLiDARやToFカメラなどのセンサーによる人流計測を用いた、プロジェクションマッピング等の歩行者向けのフィードバック動作を容易に実装できるように、IoT分野の標準仕様を活用した拡張性の高いシステムを開発しました。これにより、施設のデザインコンセプトやイベント企画等に応じて高い頻度でコンテンツが更新が可能となり、利用者が飽きない工夫をすることで慣れによる感染対策の弛みを防ぐ運用が可能となります。

*1 フィジカル・ディスタンシング。 「フィジカルディスタンス」は、WHOが「ソーシャル・ディスタンシング」、「ソーシャルディスタンス」からの言い換えを推奨している感染予防策のひとつです。
*2 Laser imaging Detection and Ranging。 赤外線によるレーザー・センシング技術で、これを用いた人の計測は日立情報通信エンジニアリングがサービス事業として進めております。
*3 ToF(Time of Flight)カメラ。赤外線による3D空間の距離測定技術で、ハードウェアおよび人の計測のソフトウェアは日立LGデータストレージから提供されています。

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ
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